06Journal
【完全保存版】ベトナムジッポー|従軍年号(Year)で読む“兵士の1年間”|年号刻印の意味 ④
ベトナムジッポーを見ていると、必ずと言っていいほど目に入る年号刻印。
’67–’68
’67–’68
’70–’71 など。
どれも短く、素気ない数字です。
しかし、この2つの数字の間には、ひとりの兵士が 「戦争と向き合った365日」 が詰まっています。
なぜ1年区切りなのか?
なぜ兵士はその1年を刻んだのか?
そこには、ベトナム戦争ならではの制度と兵士心理がありました。
🪖 Vietnam Zippo Master Guide|全7シリーズ
ベトナム戦争ZIPPOを
「部隊章・戦地名・従軍年号・刻まれた言葉・使用感・真贋」という6つの視点から体系的に読み解く、KICガレージによる総合ガイドです。
【ラインナップ】
🔷 ①【総まとめ】ベトナムZIPPOとは?
🔷 ② Unit Patch(部隊章)|部隊マーク・徽章ガイド
🔷 ③ Place Name(戦地名)|I〜IV Corps × 部隊配置ガイド
🔷 ④ Year(従軍年号)|“1年間ローテーション”と年号刻印の意味
🔷 ⑤ Motto / Personal Message(兵士のメッセージ)|刻まれた言葉の背景
🔷 ⑥ Damage / Condition(ダメージ)|本物のエイジングと修理痕の見分け方
🔷 ⑦ Fake vs Real(真偽)|本物と偽物の見分け方ガイド
※各項目はすべて独立記事として詳しく解説しています。
本記事の最後に各ラインナップへのリンクを貼ってあります。
このガイドは、ベトナムZIPPOを6つの視点から読み解くシリーズの第4回です。
テーマは「Year(従軍年号)」。ZIPPOに刻まれた “’67–’68” のような従軍年号が、なぜ兵士の人生そのものを表しているのかを紐解きます。
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― Tour of Duty(1年間ローテーション制度)が生んだ“ベトナムZIPPOの年号文化”

■ 1. 「1年間ローテーション制度(Tour of Duty)」とは?
米陸軍はベトナム戦争において、1年間で兵士を交代させるローテーション制度(Tour of Duty) を採用しました。
-
通常兵士 → 12か月(365日)
-
海兵隊(USMC) → 13か月
-
連続延長(Extension)は可能だが稀
なぜこの制度が生まれたかというと、
・長期派兵は戦意喪失の原因になる
・徴兵兵(ドラフト兵)の士気を保つ必要があった
・戦場ストレスの極限化を避けるため
という現実的理由からでした。
兵士たちは派遣された瞬間から、心の中でこう数え始めます。
“残り 365 days…”
“残り 200 days…”
“あと100日だ”
カウントダウン文化(Short-timer culture)が生まれ、それがZIPPOの刻印にも強く反映されました。
■ 2. なぜ ZIPPO に「1年区切りの年号」を刻んだのか?
兵士にとって ZIPPO は “戦友のような存在” でした。
そのアルミの小さな面に刻まれた “67–68” は、単なる期間ではなく 「生き延びた証」 だったからです。
兵士たちが年号を刻んだ理由は主に4つあります。
● 理由①:自分の Tour(従軍期間)を忘れないため
過酷な戦場では日付の感覚が薄れます。
「この一年を戦った」という印を、自分のライターに残しておきたかったのです。
● 理由②:再会の証として
戦友同士が「同じ Tour を戦った証」として交換する例も多くありました。
ZIPPOを交換した兵士たちは口々に
“We survived that year.”(俺たちはあの一年を生き抜いた)
と言ったと言われています。
● 理由③:帰ってきた証拠
帰還後、仲間や家族に見せるための“記念品”でもありました。
とくに、
-
1967–1968(テト攻勢)
-
1970–1971(カンボジア侵攻期)
など主要作戦の年は、彫刻の数も特に多く見られます。
● 理由④:2年刻みは「延長(Extension)」の証
稀に “’67–’69” のような 2年刻み が存在します。
こうしたZIPPOは、
-
ベテランの志願兵
-
特殊部隊(Green Beret)
-
航空隊(Air Cav)
-
前線司令部スタッフ
などの「自ら延長した兵士」か、あるいは 2回目のTourに戻った兵士 の可能性が高いとされます。
これは極めて珍しい文化で、ZIPPO市場でも価値が上がる傾向があります。
■ 3. ベトナムZIPPOを理解する上で「年号」は最重要ポイント

ZIPPOコレクターにとって、年号(Year) は真贋判断や背景理解に欠かせないキーワードです。
実際、年号は次の3つの情報を教えてくれます。
-
そのZIPPOが実際に戦場で使われた時期
-
兵士がどの地区(I〜IV Corps)にいた可能性が高いか
-
刻まれたメッセージの“状況背景”
特に ’67–’68 ZIPPO はテト攻勢を反映するものが多く、’70–’71 ZIPPO には撤退ムードのメッセージが多く彫られます。
例えば:
-
「When I die, bury me face down」
-
「Short-Timer」
-
「I Want to Go Home」
これらは年号が示す情勢と密接にリンクしているのです。
■ 4. ZIPPOの年号刻印は“兵士の個人史”そのもの
あるコレクターはこう語っています。
“A Zippo tells the story the soldier couldn’t say out loud.”
(ZIPPOは、兵士が口にできなかった物語を語っている)
年号はその中心にあります。
ZIPPOの裏面に彫られた “67–68” の二つの数字は、その兵士が戦場を生き抜いた一年であり、その兵士が見た光景、聞いた音、抱えた恐怖や願いが詰まった 小さな日記帳 なのです。
■ 5. 年号とボトムスタンプ(製造年)は必ずしも一致しない

― しかし「1980年製ベースのベトナムZIPPO」は絶対に存在しない理由
ベトナムZIPPOを語るうえで、絶対に知っておきたい事実があります。
それは――
ZIPPO本体の製造年(ボトムスタンプ)と、刻まれた従軍年号は一致しない場合がある。
ということです。
しかし、
“1980年製ZIPPOに ’67–’68 と彫られたベトナムZIPPO” が存在することは絶対にありえません。
理由は明確です。
● ベトナム戦争は 1975年 に終結している
どんなに遅くても 1975年以降に戦場でZIPPOが彫られることはない。
つまり、
-
ZIPPO本体の製造年が1976年以降
-
1980年代のボトムスタンプ
-
さらには90年代のZIPPOに “67–68” と彫ってある
こうしたものは すべて戦後に作られた贋作(偽物) です。
● では、1950年代製ZIPPOに ’67–’68 はアリなのか?
これは「ありえます」。
実際に存在しますし、現物も数多く市場に出ています。
理由はシンプル。
当時の兵士たちは、
「基地のPXで買えたり、家から持ってきたZIPPOを使っていた」
からです。
1950年代製のZIPPOを持ってきて、戦場で彫ってもらうことは普通にありました。
特に以下のようなケースが多い:
-
親や兄が使っていたZIPPOを持参
-
PXで「古くて味のあるZIPPO」をあえて買った
-
自分のラッキーアイテムとして持参
そのため、
1957年製 ZIPPO + “67–68” 刻印
のような組み合わせは、完全にリアル(戦場使用の可能性あり)です。
● “製造年が古い ZIPPO × 従軍年号が新しい刻印”
これはむしろ 戦場文化としてリアルで魅力的な組み合わせ
ベトナムZIPPOで最も大切なのは「一貫性」ではありません。
“その兵士が、その年を、そのライターで過ごしたかどうか”
です。
1950年代製のZIPPOに
1967–1968 の刻印
があった場合、
「ああ、この兵士は古いZIPPOを幸運のお守りとして戦場に持ち込んだんだな」
と読み取れるわけです。
コレクターとしては、むしろロマンがあるポイントでもあります。
● 一方で「製造年が新しすぎるZIPPO × ベトナム刻印」は即アウト
逆に、
-
1980年代製
-
1976年以降製
-
ボトム刻印がバーコード化された90年代モデル
こういったZIPPOに
-
67–68
-
70–71
-
68–69
-
Vietnam などの刻印
がある場合は、
「戦後に作られたレプリカまたは偽物」 であると断言できます。
■ まとめ:年号を見るときは「本体の製造年」とセットで見るべし
ZIPPOの魅力は、刻まれた数字や言葉だけでなく、
“そのZIPPOがどの時代に作られ、どの時代に使われたのか”
を読み解く楽しさにあります。
-
1950年代製 ZIPPO + ’67–’68 → リアルに存在する。魅力的な組み合わせ。
-
1970年代製 ZIPPO + ’70–’71 → 戦場使用可能性あり。自然。
-
1980年代以降製 ZIPPO + 戦争年号 → 100%偽物。
あなたがコレクションを見るとき、
この視点を持つだけで ベトナムZIPPOはまったく違う物語を語り始めます。
■ まとめ:Year(従軍年号)を知れば、ZIPPOは“ただのライター”ではなくなる
ベトナムZIPPOの魅力は、
兵士が刻んだ「部隊章」でも「戦地名」でも「メッセージ」でもありません。
それらすべての背景にある 365日の個人史 が、
ひとりの兵士の人生と、戦争そのものを静かに語っているからです。
あなたが ZIPPO を手に取ったとき、
その裏に “67–68” と彫られていたら――
それは、その兵士が 生きて帰るために戦った一年の記録 なのです。
🪖 Vietnam Zippo Master Guide|関連記事リンク集(全7シリーズ)
ベトナム戦争ZIPPOを深く理解するための、KICガレージによる専門ガイドシリーズです。
気になるテーマから読み進めてください。
🔷 ①【総まとめ】ベトナムZIPPOとは?
戦場で刻まれた「部隊章・戦地名・年号・メッセージ」の意味を総合解説するガイド。
🔷 ② Unit Patch(部隊章)|部隊マーク・徽章ガイド
実物ZIPPOに彫られた部隊マーク・徽章の一覧と、部隊ごとの豆知識。
🔷 ③ Place Name(戦地名)|I〜IV Corps × 部隊配置ガイド
ZIPPOに刻まれた戦地名の意味と、地域別の主な米軍部隊の配置を解説。
🔷 ④ Year(従軍年号)|“1年間ローテーション”と年号刻印の意味
’67–’68 などの従軍年号が持つ意味と、兵士の1年間(Tour of Duty)を読み解く。
🔷 ⑤ Motto / Personal Message(兵士のメッセージ)|刻まれた言葉の背景
実際の英語メッセージの実例と、兵士の心理・背景を解説。
🔷 ⑥ Damage / Condition(ダメージ)|本物のエイジングと修理痕の見分け方
戦場で生きたZIPPOが持つリアルなエイジング(使用痕・経年変化)を徹底解説。
🔷 ⑦ Fake vs Real(真贋)|本物と偽物の見分け方ガイド
底刻印・彫りのタッチ・経年変化・内容の整合性から偽物を見抜くポイント。
ヴィンテージジッポをお探しの際はKIC GARAGEへ

ベトナムジッポーは、アメリカ兵がベトナム戦争下で手彫りしたアートピースで、ミリタリーだけでなくヌードや風刺、反戦など多彩な表現が見られます。一点ものとしての希少性からコレクターに人気で、真贋の見極めが重要です。
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