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ベトナム戦争におけるAH-1 コブラ(Bell AH-1 Cobra)

ベトナム戦争における AH-1 コブラ(Bell AH-1 Cobra)

概要
AH-1 コブラは、ベトナム戦争中に実戦投入されたアメリカ陸軍初の専用攻撃ヘリコプターです。従来の輸送ヘリに武装を施したガンシップではなく、最初から攻撃任務専用に設計された機体であり、機動力と火力を兼ね備えたヘリコプターとして活躍しました。
開発背景
ベトナム戦争初期、アメリカ軍は輸送ヘリ(UH-1 ヒューイ)に機関銃やロケットを搭載し、敵地への兵員輸送時に護衛する「ガンシップ」として運用していました。しかし、UH-1は本来の輸送能力と攻撃能力を両立させるには限界があり、より高性能な専用攻撃ヘリの必要性が高まっていました。
これを受け、ベル・ヘリコプター社は UH-1 のエンジンや回転翼システムを流用しつつ、機体をスリム化して攻撃能力に特化した AH-1 コブラ を開発しました。1967年に制式採用され、同年からベトナム戦争で運用が開始されました。
設計と特徴
AH-1 コブラの設計は、それまでの輸送ヘリとは一線を画するものでした。
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タンデム(縦列)座席
パイロットと射手(ガンナー)が前後に並ぶ配置で、視界を確保しつつ機体の幅を狭くして被弾率を低減。 -
スリムな機体
UH-1 に比べて機体幅を大幅に縮小し、敵の攻撃を受けにくくするとともに、空力性能を向上。 -
強力な武装
- 機首に M28 タレットシステム(ミニガンやグレネードランチャー搭載)
- 2.75インチ(70mm)ロケット弾ポッド
- 一部のモデルではTOW対戦車ミサイルも搭載可能
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優れた機動性
UH-1と同じタービンエンジンを搭載しながらも、軽量化によって飛行性能を向上させ、高速での接近・離脱が可能。
ベトナム戦争での活躍
AH-1 コブラは、主に以下の任務で活躍しました。
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ヘリボーン部隊の護衛
- UH-1 ヒューイが兵士を降下させる際、周囲の敵兵を攻撃して安全を確保。
- ベトコンや北ベトナム軍の待ち伏せ攻撃を防ぐため、先行して索敵・攻撃を実施。
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地上部隊の近接航空支援(CAS)
- 歩兵部隊が敵と交戦する際、上空からロケットや機関砲で火力支援を提供。
- 特にジャングル戦では、地上部隊の視界が制限されるため、上空からの支援が有効だった。
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偵察・護衛任務
- OH-6 カイユース(小型偵察ヘリ)とペアを組み、OH-6が敵を発見すると、AH-1が攻撃を仕掛ける「ハンター・キラー戦術」を実施。
戦争終結後とその後
- ベトナム戦争後もAH-1 コブラは改良が続けられ、冷戦期や湾岸戦争でも使用された。
- その後、より高性能な AH-64 アパッチ が登場し、現在ではアメリカ陸軍では退役。
- しかし、改良型の AH-1W スーパーコブラ や AH-1Z バイパー は、アメリカ海兵隊で現在も運用されている。
まとめ
AH-1 コブラは、ベトナム戦争で初めて実戦投入された専用攻撃ヘリコプターであり、戦場での火力支援に革新をもたらしました。ヘリボーン作戦の支援や地上部隊の援護、偵察任務などで高い戦果を上げ、その後の攻撃ヘリの発展に大きな影響を与えた機体です。