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1910年製ロイヤルコペンハーゲンイヤープレートの徹底解説

1910年製ロイヤルコペンハーゲンイヤープレートの徹底解説

ロイヤルコペンハーゲンの1910年製イヤープレート


ロイヤルコペンハーゲンの1910年製イヤープレートは、「The Magi(マギ)」というタイトルの作品です。このイヤープレートは、キリスト教の伝統的なテーマである東方の三人の賢者(マギ)が、星に導かれてベツレヘムへと旅する場面を描いたものです。この図案はクリスマスの物語を象徴しており、ロイヤルコペンハーゲンがその芸術性を通じて宗教的なテーマをどのように表現したかを示しています。

※年月やその特徴については、現物をベースに文献等による確認もしておりますが、多少前後していたり、間違いもあるかもしれません。その点はご容赦ください。

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デザインの特徴

「The Magi」の図案は、夜空に輝く星の光に導かれて、ベツレヘムでイエス・キリストの誕生を祝うために向かった賢者たちが、マタイの福音書 2章1-11節※に伝わる「東方の博士たち(賢者たち)」がイエス・キリストを訪問し、贈り物を捧げる場面が描かれています。
深いブルーを基調とした背景が夜の静けさと神秘的な雰囲気を引き立てています。また、プレートの縁にはベツヘルムまで彼らを導いた星が美しく描かれており、宗教的な荘厳さを感じさせる作品となっております。
この輝く星は、1930年代以降のイヤープレートの縁の上部に配されている星の意匠の原型であり、ロイヤルコペンハーゲンイヤープレートを語る上でも極めて重要で価値のあるプレートです。


マタイの福音書 2章1-11節
「東方の博士たち(賢者たち)」がイエス・キリストを訪問し、贈り物を捧げる場面が描かれています。このエピソードは「東方の博士たちの礼拝」として知られ、クリスマスの物語の重要な部分です。

以下、本文の内容をまとめ、解説します。


本文(新共同訳から引用)

1 イエスがヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て言った。
2 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおられますか。私たちは東方でその星を見て、その方を拝みに来ました。」
3 これを聞いてヘロデ王は不安を抱いたが、エルサレムの人々も皆同様であった。
4 王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集め、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。
5 彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。
6 『ユダの地、ベツレヘムよ、
ユダの指導者たちの中で、決して最も小さくはない。
お前から指導者が現れ、
私の民イスラエルの牧者となるからである。』」
7 そこでヘロデは博士たちをひそかに呼び寄せ、星が現れたときについて詳しく聞いた。
8 そして、「行ってその子のことを詳しく調べ、見つけたら知らせてくれ。私も行って拝むから」と言って、彼らをベツレヘムに送り出した。
9 彼らは王の言葉を聞いて出かけた。すると、見よ、彼らが東方で見た星が先立って進み、幼子のいる所まで行き、上にとどまった。
10 その星を見て、彼らはこの上もなく喜んだ。
11 そしてその家に入り、母マリアと共にいる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として捧げた。




プレートは、ロイヤルコペンハーゲンが得意とするブルー&ホワイトのアンダーグレーズ(下絵付け)技法で装飾され、陶磁器に描かれる独特の青い濃淡が作品に深みと魅力を与えています。柔らかな青色のグラデーションは、シンプルながらも時代を超えた美しさを持ち、どんなインテリアにも映える逸品です。


デザインと制作者

このイヤープレートのデザインは、ロイヤルコペンハーゲンの著名なアーティストであるクリスチャン・トムセン(Christian Thomsen)※が手掛けました。トムセンは、宗教的なテーマを得意とし、このプレートでは青と白のバランスが美しい「アンダーグレイズ」技法を用いて描きました。この技法は、当時のロイヤルコペンハーゲンの芸術監督であるアーノルド・クロッグ(Arnold Krog)※※によって導入され、後に同ブランドの象徴となりました。この作品は、クリスマスプレートの伝統を確立し、その後のイヤープレートシリーズの基盤を築きました​。


※クリスチャン・トムセン(Christian Thomsen, 1860–1921)
デンマークの彫刻家であり、ロイヤルコペンハーゲンで長く活躍した著名なデザイナーです。彼は1898年にロイヤルコペンハーゲンに採用され、1921年に亡くなるまで多くのデザインを手掛けました。

トムセンの作品は、動物や人物像、そしてアンデルセン童話を題材にしたフィギュリンで特に知られています。また、彼はクリスマスプレートを含む36点の記念プレートのデザインも担当し、1908年のイヤープレート制作を手掛けたことで特に注目されています。

彼のスタイルは、細部へのこだわりとデンマークの文化的アイデンティティを象徴する要素を巧みに融合させているのが特徴です。そのため、彼の作品は収集家や陶磁器愛好家にとって高く評価されています。


※※アーノルド・クロッグ(Arnold Krog、1856–1931)
デンマークの建築家、画家、デザイナーで、1884年から1916年にかけてロイヤルコペンハーゲンの芸術監督を務めました。彼は、同社の伝統的なスタイルを刷新し、日本の陶磁器や自然主義的なデザインからインスピレーションを得た新しいスタイルを導入しました。このスタイルは、風景や自然の描写を可能にする「アンダーグレーズ技術」を活用しており、ロイヤルコペンハーゲンの代表的な特徴となっています​。

彼の指導の下、ロイヤルコペンハーゲンは1888年のコペンハーゲン北欧展示会での評価や、1891年のパリ万国博覧会でのグランプリ受賞など、国際的な名声を確立しました。また、アーノルド・クロスはロイヤルコペンハーゲン初のアンダーグレーズ記念プレート(のちのクリスマスプレートの原型)をデザインし、これが同社の新しい伝統の一つとなりました​。

クロ-グはまた、退任後に風景画家としても活躍し、彼の作品や影響は現在もデンマーク芸術の重要な一部とされています。彼のデザイン哲学と技術革新は、ロイヤルコペンハーゲンの成功と進化において不可欠な役割を果たしました。



製造秘話とバックスタンプ

1910年製のイヤープレートは、デンマーク国内外で人気が高く、需要の増加に応える形で製造されました。しかし、当時の技術では、製造工程が非常に手間がかかるものであり、一枚一枚が職人の手作業によるものでした。

プレートのサイズは、直径:約15.5cm、高さ:約2.2cmと現在のイヤープレートに比べてふた回りほど小ぶりのサイズも希少性を高めています。

※ちなみに現在のサイズになったのは、1911年からです。


バックスタンプは、王冠マークと三本の波模様と形状番号(フォルムナンバー)です。王冠マークに「DENMARK」のロゴは入っていません。

現在の価値

1910年製イヤープレート「The Magi」は、現在に引き継がれた星の意匠の原型としてロイヤルコペンハーゲンのコレクターにとって特に貴重なアイテムとされています。その宗教的なテーマと美しいデザインが多くの人々に支持され、オークションやアンティーク市場では高い評価を得ています。このプレートは、クリスマスの装飾品やギフトとしても人気があり、その歴史的背景と芸術性から永続的な価値を持っています。

1910年製イヤープレートの魅力をぜひ体感してください!

ロイヤルコペンハーゲン イヤープレートのバックスタンプの全体像については、「ロイヤル・コペンハーゲン イヤープレートのバックスタンプ徹底解説」にて解説しています。

販売中の商品については、こちらをご覧ください。